混沌の時代

2005年11月1日に動き出した日本の夢は、今日を持って終焉を迎えることになった。


通算 39レース、4コンストラクターズポイント。コンストラクターズ最高位 9位(2007シーズン)。

Super Aguri F1 Teamがこの2年半の間に残してきた結果である。


個人的には、Hondaに今シーズンいっぱいまで支援してもらいたい気持ちだったが、

Hondaも上場企業であるとともに、ワークスチームである Honda F1 も抱えている、

さらに SAF1への支援というような、F1だけに湯水のごとく予算をつぎ込むわけにも行かない。

これまでマシンやエンジンの供給を続けてきたことに、ひとまず敬意を表したい。

プライベートチームの現状


カスタマーカーは、結局ウィリアムズを中心とした反対によって、導入されないことになった。

この変更により、今シーズンから参入予定だったプロドライブが計画を中止し、今回 SAF1が撤退することになった。

ウィリアムズにしてみれば、トップチームのクローンが生まれることで、ポイントの可能性がさらに低くなることを危惧した結果であることは間違いない。


しかし、このままカスタマーカーが廃止され、2010年までにトロロッソの買い手がつかなければ、さらに1チームが消滅する。

そして、その可能性は少なくない。

現在のトロロッソは、言うまでもなく技術面を完全にレッドブルに依存していて、自ら開発は行っていないし、

前身であるミナルディは、マシンの基本デザインを数年にわたって流用するのが常だった。

そんなトロロッソを買収したところで SAF1と同様にF1コンストラクターとして自立するための手間とコストがさらに必要となる。

供託金が近いうちに廃止され、しかも エントリー枠が2つも余っているのにもかかわらず

わざわざマシテッツに大金を払ってまでトロロッソを買収しようとする人がいるだろうか。

混沌の時代

現状のF1は、混沌の時代に差し掛かっているのだろう。

25年ほどの間にF1を取り巻く環境は大きく変わったのである。


1980年代初頭までのF1はコンストラクタ(チーム)がすべてだった。

多くのチームはCosworth DFVを使い、エンジンの性能はどのチームもほぼ互角だった。

そのためシャシー性能が何よりも重要だった。


しかし、80年代中盤から自動車メーカーがエンジンサプライヤーとして参戦するころからワークス色が強くなってくる。

80年代の ウィリアムズ(・ホンダ)、ロータス(・ルノー)、マクラーレン(・TAGポルシェ/ホンダ)、ブラバムBMW

90年代のウィリアムズ・ルノーマクラーレンメルセデスベネトン(・フォード/ルノー)

1983年以降 チャンピオンになったすべてのマシンがワークスエンジン搭載車である。


そして、90年代後半以降 エンジンサプライヤーという枠を超えて、メーカーの直接参戦が始まる。

トヨタ、ホンダ(実際は BAR -> BARを買収)、メルセデス(マクラーレンとイルモアに対する資本参加)、BMW(ザウバー買収)

そして90年代以降の流れには、F1の膨大な活動資金を支えてきたタバコ広告の禁止も関係していることだろう。


同時に、FIA、FOM/FOA、メーカーといったステークホルダーの思惑が複雑になり、

F1のビジョン/方向性の共有が難しくなってきた。

チーム運営やレギュレーションのベースになる 新コンコルド協定は未だ宙に浮いたままで発効されていないし、

年間イベント数についても、商業的立場から増加を主張するFOM/FOAと チームの負荷を理由に減少を主張するFIA・チーム側の溝は埋まっていない。

さらに昨今のモズレー問題や、高齢なバーニーの後継者問題というように内部的な問題も抱えている。


ワークスとプライベーターとの差を縮めるべく検討されている予算制限

テストの年間制限も数年かかって、ようやく合意できた経緯を考えると、

予算制限の合意を得るのはより困難だろう。

そもそもこの制度の有効性自体が疑問である。


少なくとも モズレーが交代し、後任者が新たなリーダーシップを発揮しない限り、

現状の状況が大きく改善されることはないだろう。


潔くモズレーには退任してもらい、J.トッド以外のクリーンな人間にFIA会長になって改革を進めてもらいたい。